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ハンター十ヶ条 逐条考察

●読みについて

32巻16頁において「じゅっかじょう」というルビが振ってあるが、正しくは(伝統的な読みは)「じっかじょう」。
其乃一」から「其乃十」までの構成となっているが、「十ヶ条」の名のとおり、「其乃一」は「第一条」を指す。


●性格について

ハンター十ヶ条は、行政府が制定する法令の類ではなく、ハンター協会という組織(一民間団体)の内規である。
そのため、法令に優先する行為は当然にできない。
十ヶ条の中には、其乃四のように一見すると超法規的措置となるような記述があるが、現行法令の域は出ていない(後述)。


●逐条考察

其乃一   ハンターたる者   何かを狩らねばならない

・本条は、ハンターの「理念」について述べているものである。

・「何かを狩る」とは、単純な物理的狩猟活動のみならず、未知のものを求める、未踏のものに挑戦するといった意味を持つと考えてよいと思われる。

・逆に言えば、何かを狩らなければハンターとはいえない。
協専のハンターは、協会からの依頼によって何らかの獲物を追いかけることはあると思われるので、その意味で本条には反していないようにみえる。
しかし、この場合「何かを狩る」ことは「何かを追い求める」ことと同義であろうから、自らの意志・信念なき狩り(ハント)は、ハンターとしてのあり方を問われる対象となると考えられる。

▼筆致の改正案
  (理念)
第1条  ハンターは、何かを狩らなければならない。



其乃二   ハンターたる者   最低限の武の心得は必要である
最低限とは念の修得である

・本条は、ハンターの「資質」について述べているものである。

・ヘッドハンターとして高い評価を得ているテラデインは、一方で物理的戦闘力に関しては素人(常人)同然であるような印象を受けがちである。
しかし、これはあくまでも「物理的戦闘力に秀でたハンター達の中での比較」と考えるのが適当である。
念を修得している者とそうでない者の差は歴然であり、例えば武術経験・戦闘技術のないテラデインであっても、しっかりと念の修得がなされていれば、念の概念を知らない一般人よりも戦闘における攻撃力・防御力はもちろん、攻撃の速度や耐久力、戦いを続ける体力にも優れると考えてよいだろう。

・「習得」とは技術を覚えること。対して「修得」とは、技術を深く身につけることをいう。
本条は後者を採用していることからも、単なる四大行の習得に止まらず、応用技であるなどを使いこなせるレベルに達していることが求められていると考えられる。
もっとも、16巻174頁のツェズゲラの台詞にあるとおり、念は筋肉などと同様、常に修行していないと衰えるような記述がされているため、ハンターとして認定されて久しいであろう現在のテラデインが、四大行はともかく、応用技までしっかりとこなせるかは疑わしい。

・本旨から外れるが、テラデインはヘッドハンターとしてダブルの評価を得ている。
対象となる人物のオーラから、資質・将来性などを見抜くことができるのかもしれない。
クラピカの台詞に、「得意な能力を持つ者が同じような才能の持ち主を発掘することはよくある(2巻30頁)」とあるが、テラデインも自らと同じように、執務能力が高い人物を見抜く目(もしくは能力)を持っている可能性がある。

▼筆致の改正案
  (資質)
第2条  ハンターは、最低限の武の心得を必要とする。
2  前項における最低限の武の心得とは、念の修得をいう。




其乃三   一度ハンターの証(ライセンス)を得た者は如何なる事情があろうともそれを取り消されることはない
但し証の再発行も如何なる事情があろうとも行われない

・本条は、ハンターの「証の効力」について述べているものである。

・一行目については、サトツがゴンに対して述べている場面がある(4巻70頁)。
証を紛失したり、盗難の憂き目にあったりしても、ハンターとしての身分自体は保証されるというものだ。
一方で、例えば理由なく他人を殺害しても、証そのものが没収されたり、証の効力が失われたりすることはないということになる。
人々の規範となるのがハンターであるという理念を掲げるのはよいが、ビノールトシャルナークの存在でわかるように、理念の設定だけでは全てのハンター達の(反社会的な)行動を抑制できていないのが現状である。
罪を犯したハンターに対し、何の制裁もないのであれば、世のハンターへの評価は落ちてしまうであろう。
この記述はハンターの身分を保障する一方で、ハンターの社会的地位の不安定性を孕んでいる表記であるともいえる。

・死亡したハンターは協会の登録者数から除外されるため、この場合は証の取消し(身分の解消)が行われるようである。

・なお、証の取消しを決定する裁量を持つ機関はハンター協会であるため、「取り消される」「行われない」という筆致でなく、「取り消さない」「行わない」という表現の方が望ましい。

▼筆致の改正案
  (証の効力)
第3条  証を得たハンターは、いかなる事情があっても証の取消しは行わない。
2  証の再発行は、いかなる事情があっても行わない。




其乃四   ハンターたる者   同胞のハンターを標的にしてはいけない
但し甚だ悪質な犯罪行為に及んだ者に於いてはその限りでない

・本条は、ハンターが狩る「対象」について述べているものである。

其乃一において、ハンターは何かを狩るものである旨が示されたが、ではその標的が何でもよいのかというとそうではない。
本条では、ハンターが他のハンターを狩ることを禁じている。自称ハンターである密猟者に対し、プロハンターが戦闘により捕獲する場合があるため(2巻75頁)、この場合の「他のハンター」とは、協会から認定を受けたプロハンターであり、アマチュアのそれは含まないと考えられる。

・二行目は、本条の例外規定である。
其乃三が、罪人となったハンターにまで身分を保障することが読み取れるため、本条のただし書きにてこれを補足している。
ビノールトが賞金首(ブラックリスト)ハンターでありながら、自身も賞金首となっていることが事例として挙げられる。
ただし、ハンターが他のハンターを標的にするのはあくまでも「甚だ悪質」な場合に限られており、そうでない場合、例えばよくある傷害事件や窃盗等の行為については、当事者が他のハンターから追跡を受けることはない、もしくはできないと思われる。
そのため、其乃三にも記したとおり、規律を乱すハンターが、ハンターの社会的地位を下落させてしまうことについては、本条の例外規定があったとしても避けられない状況にある。

・「甚だ悪質な犯罪行為」に対しては、ハンターがハンターを標的にできることが読み取れるが、「標的」にすることや「捕獲」自体は違法性もなく、イコール「殺害」「私的制裁」でもない。
ハンターがその正義感・使命感から犯罪者を追い、捕獲し、然るべき機関へ引き渡すという、極めて常識的な行動を想定しているに過ぎない。
HUNTER×HUNTERの世界では、標的=捕獲=死のようなイメージもあるが、ハンター協会の内規である十ヶ条が、現行法令を越えることはないのである。
テラデインがハンターの有志に対し、イルミを追う指示を出している場面(32巻166頁)でも、悪質犯罪者であるイルミとその一派(針人間とヒソカ)を「捕獲」と言っており、殺害など現行法令に触れるような指示はしていない。
なお、この場面におけるイルミの「罪」とは、複数の一般人への傷害行為(針を刺して操り、死傷させたこと)を指す。

・4巻119頁において、ヒソカが「人を殺害しても免責になる場合が多い」と述べているが、この場合の免責とは正当防衛など、相当の理由が必要とされるものと考えられる。
ハンターはその業務の特殊性や実績などが、裁判における状況判断の際、若干有利に働く場合もあるのかもしれないが、殺害行為が無条件に免責となるわけではない。
なお、カンザイから「殺人鬼」と呼ばれたヒソカであるが(30巻202頁)、これはハンター試験の際、ヒソカが多くの受験生を死に至らしめたことが原因と考えられる。

・ではこのヒソカの罪状についてはどうなのか。
ハンター試験は受験の際、試験官であるサトツが述べているとおり(1巻133頁)、受験生が負傷したり、死に至ったりしても、協会や試験官、受験生に対し提訴しないことを条件としている可能性が高いため、ヒソカの行為は感心できないものの、試験以外の場所において社会的秩序が保たれることを条件として、特別に不問とされているとみてよいかと考える。
このようなことは社会通念上認められることではないが、これこそがハンターとしての特権ともいえよう。

ブシドラは本条の改正を唱えていた。
ハンターは、「甚だ悪質な犯罪行為」があって初めて当該ハンターを標的にできるが、そうなってからでは協会員の名誉が汚されると考え、犯罪行為が行われる前の段階、もしくは行われている最中に、当該ハンターを(主に武力で)除外できるような体制づくりを考えていたようである。
「協会の風紀委員」と呼ばれるブシドラらしい主張といえるが、当然これに賛同するハンターも少なくないと思われる。

▼筆致の改正案
  (対象)
第4条  ハンターは、他のハンターを標的にしてはならない。
  ただし、甚だ悪質な犯罪行為に及んだ者においてはこの限りでない。




其乃五   特定の分野に於いて華々しい業績を残したハンターには星が一つ与えられる


・本条は、ハンターの称号(一ッ星への昇任)について述べているものである。

・一ッ星への昇任基準(=「華々しい業績」の定義)や、決定に至る過程等は不明である。
会長の権限が絶大である協会においては、会長の独断で星の授与を決定することも過去にはあったのかもしれない。
現在シングルであることが判明しているのはメンチ、ツェズゲラ、イックションペ、モラウ、サンビカ、ブシドラ、キューティーの7名であるが、メンチやツェズゲラの紹介頁をみると、それぞれ生業としているハンターの中では指折りの実力者であるということがみてとれる。

▼筆致の改正案
  (一ッ星への昇任)
第5条  特定の分野において、華々しい業績を残したと認められるハンターには、称号として星が一つ与えられる。




其乃六   五条を満たし且つ上官職に就き   育成に携わった後輩のハンターが星を取得した時   その先輩ハンターには星が二つ与えられる


・本条は、ハンターの称号(二ッ星への昇任)について述べているものである。

・ハンター十ヶ条の筆致については、読者にわかりやすいように記したものと思われるが、ここは正確を期すため、表記されていない「五条」という言葉使いではなく、「前条」とするのが望ましい。
同様に「星が二つ」では、「『其乃五』で星1つ授与」+「『其乃六』で星2つ授与」=「星3つ授与」となってしまうため、「星が二つ」ではなく「さらに星が一つ」、もしくは「二つ目の星が」と記すべきである。

・「上官職」というものの定義が不明であるが、ビスケ→ウイング、ウイング→ゴン・キルア・ズシイズナビ→クラピカ、モラウ→ナックルシュートノヴパームなどの関係がヒントとなる。
格闘や念の習得について、指導する師匠と弟子の関係を指している又は近いのではないかと考えられる。

・シングルになり得るハンターは、その経験や修得した技術により、他ハンターの指導的立場となることが予想される。
自らの技術を他のハンター伝授、継承することで初めて次のステップ(ダブル)に行けるというシステムは、とかく個人事業主になりがちなハンター達の結束も促すことになり、組織としても望ましい形態であるといえる。

▼筆致の改正案
  (二ッ星への昇任)
第6条  前条を満たし、かつ上官職に就き、育成に携わったハンターが星を取得したとき、その上官職となったハンターには、称号としてさらに星が一つ与えられる。




其乃七   六条を満たし且つ複数の分野に於いて華々しい業績を残したハンターには星が三つ与えられる


・本条は、ハンターの称号(三ッ星への昇任)について述べているものである。

・モラウについては、シングルから一気にトリプルへ昇任する噂もあるが、実際に二ッ星を飛び越しての昇任も可能である。
ナックル、シュートがキメラアント駆逐への貢献を理由にシングルの称号を得た場合、2人の師匠であるモラウはダブルへ昇任、加えて自らのキメラアント駆逐への貢献度が評価され、「シングルで得た分野以外の業績」を理由にトリプルへ昇任するというシナリオである。

・なお、弟子であるハンターがシングルになると、師匠であるハンターも自動的にダブルに昇任するわけではない。
弟子がシングルに昇格時、師匠が星なしであるケースや、師匠が既にダブルかトリプルであるケースなどがこれにあたる。
また、初めから念を修得しているヒソカやイルミについては、師匠にあたる人物がいないため、ケース自体が発生しないと考えられる。

・「其乃六」と同様、「星が三つ」ではなく、「さらに星が一つ」、もしくは「三つ目の星が」とすべきである。
文面どおりだと、其の五で星1つ、其の六で星がプラス2(=星3)、本条で星がプラス3(=星6)と読み取れてしまうからである。

▼筆致の改正案
  (三ッ星への昇任)
第7条  前条を満たし、かつ複数の分野において、華々しい業績を残したと認められるハンターには、称号としてさらに星が一つ与えられる。




其乃八   ハンターの最高責任者たる者 最低限の信任がなければその資格を有することは出来ない
最低限とは全同胞の過半数である
会長の座が空席となった時 即ちに次期会長の選出を行い 決定するまでの会長代行権は副たる者に与えられる


・本条は、ハンターを統べる「長の選出」について述べているものである。

・会長不在の際は、副会長がその職務を代行する。次期会長の選出を行うまでは、副会長の専決が可能ではあるが、「即ちに次期会長の選挙を行い」という文面が、協会の方針決定や事業執行に関する独占行為を阻んでいる。
この場合の「即ちに」とは、選挙を始めるにあたり必要となってくる常識的な時間の範囲は含まない。
「常識的な時間の範囲」とは、例えば選挙に必要な人員の招集、配置、ルールの決定、会員への告知などが該当する。
したがって、副会長が会長権限をできるだけ長く手にしたいがために、常識的は時間の範囲を超えて、選挙の開始を延期するようなことはできない。

・一方で、会長選挙を始められない相当の理由があれば、選挙の開始を遅らせることはできる。
例えば東日本大震災のときがそうであったように、天変地異などにより物理的に動きがとれない場合や、副会長や参謀まで含めて事故がある場合などによるものである。
これらは、天変地異からの回復(インフラ復旧など社会的な現状復帰)や、新たな代行者の決定など、延期となる原因が解消した時点から「即ちに」選挙が開始されることになる。

・ただし、第13代会長選挙時のように、ルールを決め、選挙を開始した後で、なかなか会長が決まらないことは遅延行為ではなく、単なる結果といえる。
第13代会長選挙の際、パリストンはなかなか決着がつかないように選挙を運んだ節があるが、道義的な問題はともかく、十ヶ条上は問題ない。

・パリストンの台詞にもあるように、副会長が独裁体制を築く根拠として、本条を用いることは間違っていない。
しかし、そのような行為が他のハンター達の信任や、社会的な信用を得られるかは疑問である。

▼筆致の改正案
  (長の選出)
第8条  ハンター協会(以下「協会」という。)の最高責任者(以下「会長」という。)は、最低限の信任がなければその資格を有することはできない。
2  前項における最低限の信任とは、ハンターの過半数の信任をいう。
3  会長の職が空席となった場合は、ただちに会長の選出を行う。会長を決定するまでの会長代行権は、副会長職の者に与えられる。




其乃九   新たに加入する同胞を選抜する方法の決定権は会長にある
但し従来の方法を大幅に変更する場合は全同胞の過半数以上の信任が必要である


・本条は、「新規会員の決定」について述べているものである。

・本条の権限はかなり大きなものであり、会長になる一番のメリットやその動機と考えることもできる。
審査部を抱き込んだと言われたパリストンが会長職に就くことを十二支んから警戒されたのは、本条によりパリストンの意向に沿った者のみを採用し、一大派閥を作り上げ協会を私物化するという思惑がみえたからだと思われる。

テラデインは本条の改正を唱えていた。
ブシドラが、其乃四を改正することで未然に凶悪犯罪を防ごうとした一方、テラデインは本条に手を加えることによって、犯罪を起こしそうな輩は試験の段階で排除するという主張をしている。
武闘派のブシドラと、非武闘派のテラデイン、双方の考え方の違いが表れており興味深い。
普通に考えれば、テラデインの主張が最も常識的と思える一方で、本条により犯罪歴のある者もハンターとして認定されている実態にあることから、ハンター協会は、社会悪を取り締まる警察機関的な位置付け・役割ではないことを表しているといえる。

・「大幅に変更」の度合いの解釈が難しいところではあるが、現状は「協会は会員となっているハンターに試験官への就任を委任する」「協会から委任されたハンターが、試験官としてその試験の内容を決定できる」という極めて試験官の自由度が高い設定であるため、何を変えても「大幅な変更」という枠に入ってくるように思われる。

・なお、「過半数以上」という表記のうち、「以上」という筆致は必要ない。

▼筆致の改正案
  (新規会員の決定)
第9条  協会へ新たに加入するハンターを選抜する方法の決定は、会長が行う。
  ただし、従来の方法を大幅に変更する場合は、ハンターの過半数の信任を得て決定する。




其乃十   此処に無い事柄の一切は会長とその副たる者   参謀諸氏とでの閣議で決定する
副たる者と参謀諸氏を選出する権利は会長が持つ


・本条は、其乃一から其乃九までにない事例が発生した場合の「協議事項」について述べているものである。
不測の事態への対処であり、一般の契約等でもこのような筆致で確認書が交わされる。

▼筆致の改正案
  (協議事項)
第10条  この条項にない事項は、会長、副会長及び協会の参謀となる者(以下「参謀」という。)で構成する閣議において決定する。
2  副会長及び参謀の選出は、会長が行う。


最終更新 2023.04.16